【日本茶を学ぶ:カフェイン】子供と一緒に安心して飲みたい。カフェインの特徴と摂取量目安を知ること。

3歳の娘に、急須で淹れた煎茶を一口飲ませたことがあります。
それが美味しかったらしく、ある日、突然戸棚から湯呑みを引っ張り出し
『おちゃのみたいなー』
といって私のところへトコトコやって来た。

…なんてかわいいいきものか。
モチベーション爆上がりしてしまい、これはもう止まらない。
どんどん淹れてあげるから飲んでくださいませ。

でも次の瞬間、頭によぎるカフェインの影響。

子供に飲ませていいものか?
どれくらいまで飲ませてよいものか?
心配なら与えないほうがいい。
だけどもだけど、『おちゃのみたい』といってくる娘と、もっともっと戯れていたい私。
この父親としての葛藤を乗り越える手段は無いものか。

と考えて調べたのが今回のお話。

カフェインについて学び、理解したうえで
子供と一緒にお茶を愉しむことがテーマです。

カフェインの構造と人体への影響

・カフェインは、プリンアルカロイド(プリン塩基)に属する水溶性の有機化合物です。


アルカロイド :窒素原子を含み、ほとんどの場合塩基性を示す天然由来の有機化合物の総称


⇒プリン    :分子式 C5H4N4  複素環式芳香族化合物の一種
         炭素(C)と窒素(N)からなる、六員環(六角形)と五員環(五角形)の
         二つの環で構成される環構造。

【プリンの構造】https://health.joyplot.com/HealthWordsWiki/?プリン


 プリン塩基 :プリン骨格を持った核酸塩基。
         プリン環を基本骨格とする塩基性物質
         プリン体(プリンたい)とも総称される。

・カフェインの化学式  :C8H10N4O2

https://ja.wikipedia.org/wiki/カフェイン
https://ja.wikipedia.org/wiki/カフェイン

・カフェインの人体への影響

神経を鎮静させる作用を持つアデノシンという物質と化学構造が似ており、ヒトの体内においてアデノシンが作用を発揮するために結合しなければならない場所(受容体)に結合します。その結果、アデノシンが受容体に結合できなくなることで、その働きが阻害され、神経を興奮させます。

カフェインを過剰に摂取し、中枢神経系が過剰に刺激されると、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠が起こります。消化器管の刺激により下痢や吐き気、嘔吐することもあります。

長期的な作用としては、人によってはカフェインの摂取によって高血圧リスクが高くなる可能性があること、妊婦が高濃度のカフェインを摂取した場合に、胎児の発育を阻害(低体重)する可能性が報告されています。

(引用)農林水産省 カフェインの過剰摂取について
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html

アデノシンの結合を阻害するから、鎮静作用阻害⇒興奮作用となるのですね。

https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html

なるほど確かに構造が似てる。


世間一般、カフェインを幼児や妊婦が摂取しすぎると
悪影響があるであろうことは、広く認知されています。
気を付けるべきは、あくまで「過剰に」摂取すると怖い、
という内容であること。
様々な食品にカフェインなどのアルカロイドは含まれています。
摂取を避けることに過敏になりすぎては、嗜好品として純粋に味わうことはできない。

このブログの目的は、

あくまで安全に、日本茶を愉しむにはどうしたらよいかを考える

ことですので、
じゃあ、カフェインの含まれないお茶を飲めばよい。
という考え方ももちろんありますが、
それはまた別の機会にブログにまとめたいなと思っています。

ではその「過剰」とはいったいどの程度なのでしょうか。

では、煎茶(茶葉)にはカフェインがどのくらい含まれているのでしょうか?

まず、一般的な煎茶の科学成分含有率を示します。
「茶葉」としての含有率です。
カフェイン以外ものちのちの(自分の)勉強のために併記します。

【水溶性成分】

カテキン類(タンニン)11.0~17.0%
        一例(-)‐エピカテキン(EC)1.2%
(-)‐エピカテキンガレート(ECg)2.4%
(-)‐エピガロカテキン(EGC)3.2%
(-)‐エピガロカテキンガレート(EGCg)7.2%
カフェイン1.6~3.5%
アミノ酸類1.6~3.5%
        一例テアニン1.3%
グルタミン酸0.3%
アルギニン0.2%
遊離糖0.8~2.5%
有機酸2.0~3.0%
サポニン0.2%程度
水溶性ペクチン0.7~2.0%程度
フラボノール等0.7%程度
ビタミンC0.3~0.5%程度

【水不溶性成分】

β‐カロテン13~29㎎%
ビタミンE25~70㎎%
クロロフィル0.6%程度
脂質4.7%程度
精油微量

【その他】

灰分(ミネラル)5.0%程度
      一例カルシウム0.4%程度
リン0.3%程度
カリウム2.2%程度
マンガン30~80㎎%
マグネシウム0.2%程度
亜鉛2~5㎎%
たんぱく質24.5%程度
食物繊維水溶性7.6~11.5%
水不溶性23.4~33.3%

出典:
日本茶インストラクター講座Ⅱ
「五訂日本食品成分分析表:科学技術庁資源調査会編、大蔵省印刷局発行(200)」に若干のデータを追加(含有率の単位 %は100g中のg数、㎎%は100g中の㎎数を示す)

⇒カフェインは100gの茶葉の中に、1.6~3.5g入っているということ。
 ざっくり、1包装100g茶葉の中に1円玉2~3枚分のイメージですね。

では、淹れたお茶にはカフェインがどのくらい含まれるのでしょうか

食品名カフェイン濃度備考
せん茶(浸出液)0.02 g/100 mL
(=20 mg/100 mL)
浸出法:茶葉10 g
90℃湯 430 mL
1 分
ほうじ茶(浸出液)0.02 g/100 mL
(=20 mg/100 mL)
浸出法:茶葉15 g
90℃湯 650 mL
0.5 分
玉露(浸出液)0.16 g/100 mL
(=160 mg/100 mL)
浸出法:茶葉10 g
60℃湯 60 mL
2.5分
玄米茶(浸出液)0.01 g/100 mL
(=10 mg/100 mL)
浸出法:茶葉15 g
90℃湯 650 mL
0.5 分
ウーロン茶(浸出液)0.02 g/100 mL
(=20 mg/100 mL)
浸出法:茶葉15 g
90℃湯 650 mL
0.5 分
紅茶(浸出液)0.03 g/100 mL
(=30 mg/100 mL)
浸出法:茶葉5 g
熱湯 360 mL
1.5~4 分
抹茶(粉末)3.2 g/100 g
 ※湯70 mLに粉末1.5 gを溶解した場合
  カフェイン含有量48 mg
参考
コーヒー(浸出液)
0.06 g/100 mL
(=60 mg/100 mL)
浸出法:コーヒー粉末10 g
熱湯150 mL
参考
インスタントコーヒー
(粉末)
4.0 g/100 g
 ※2 g使用した場合、1杯当たり80 mg
エナジードリンク
又は
眠気覚まし用飲料
(清涼飲料水)
32~300 mg/100 mL
※製品1本当たり36~150 mg
製品によって
カフェイン濃度及び内容量は異なる

出典:
農林水産省 カフェインの過剰摂取についてhttps://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html
エナジードリンク又は眠気覚まし用飲料(清涼飲料水)は、市販11製品の成分表示等(2015年12月22日、農林水産省調べ)
コーヒー、インスタントコーヒー、茶類は、「日本食品標準成分表2020(八訂)」

上記の分析結果は、
【煎茶:茶葉10gを430mlのお湯で入れた場合】
のデータです。
ペットボトル一本弱、茶葉は10gとなかなか多い分量ですよね。

以前に買った煎茶さえみどりのパッケージの裏面(→リンク)には
「160mlで4g」がおすすめの淹れ方と書いてありますので
茶葉10gだと400mlのお湯。
まあそんなもんか。
と思いました。

そしてこの場合、
淹れた100mLの「煎茶」には、
約20㎎のカフェインが含まれているということ。

100mlのお湯。

このサイズの湯呑でこの量。
まあ子供が飲めてこれくらいかな。

さて、一杯 カフェイン 20㎎。
子供の摂取許容量に対してどの程度でしょうか?

 カフェイン摂取に関する公的情報から探る

・厚生労働省 「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A

・農林水産省 「カフェインの過剰摂取について」 

・食品安全委員会ファクトシート 「食品中のカフェイン

子供および青少年については、参照可能な知見が不十分ではあるが、成人と同様約 3mg/kg 体重を安全な単回当たりの摂取量及び習慣的一日当たりカフェイン摂取量としても適用できるとしている。

一日 3 mg/kg 体重のカフェイン摂取は子供(3 歳~10 歳)及びティーンエージャー(10 歳~18 歳)にとって安全であるとされている

http://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf

・カナダ保健省の勧告

・ 子供はカフェインに対する感受性が高いため、4歳~6歳の子供は最大45mg/日、7歳~9歳の子供は最大62.5mg/日、10歳~12歳の子供は最大85mg/日(355ml入り缶コーラ1~2本に相当)までとする。

 ・ 13 歳以上の青少年については、データが不十分なため、確定した勧告は作成しなかったが、一日当たり2.5mg/kg 体重以上のカフェインを摂取しないこと。

  (参考)Health Canada Reminds Canadians to Manage Caffeine Consumption(2010)
http://www.healthycanadians.gc.ca/recall-alert-rappel-avis/hc-sc/2010/13484a-eng.php

以上から子供に関する記載をピックアップすると

①3 mg/kg 体重
②2.5mg/kg 体重
③4歳~6歳の子供は最大45mg/日

このあたりでしょうか。

う~ん、3歳児の情報が欲しいとこですが・・

まず3歳児の平均体重は??と思い調べます。

厚生労働省による「乳幼児身体発育調査:調査の結果」
平成22年と平成12年の調査結果が閲覧できます。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/73-22-01.pdf

まずい、細かすぎて読む気が起きない。

なのでいったん実例をもとに推察。
仮に体重 15㎏と置くと

①3 mg/kg 体重    ⇒ 1日 45㎎
②2.5mg/kg 体重    ⇒ 1日 37.5㎎
③4歳~6歳の子供は最大45mg/日

なるほどだいたい近いとこにおちつくわけです。

あくまで、3歳なら、なので
4~6歳になると体重ももちろん増えてきますから、
③の上限45㎎というのはなかなか厳しいことがわかります。

まとめ

子供向け煎茶一杯100ml カフェイン20㎎として。

体重15㎏の子供が飲もうとすると、
推奨摂取上限は、厳しく見て②の条件で37.5㎎

2杯飲んじゃうと上限超えてしまうわけです。
案外厳しいものです。

そして、カフェインはほかの食品にも含まれておりますので
決してお茶単体で考えてはいけません。

あくまで、明確なデータがない中での、念には念を入れて、の推奨量なのですが
親の愉しみのために、がぶがぶ飲ませてはいけないなあと身を引き締めます。

湯呑を持ってとことこ足元にやってきたら、

少しだけ一緒に飲んで、一瞬の子供の笑顔をもらうこと。
その笑顔を「お茶菓子」として、また一人で愉しむのが良い。
と思いました。

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